フリーランス新法が与える影響とは?概要をわかりやすく解説

2024.12.2
カテゴリー:コンサルティング

 

フリーランスの権利保護や労働環境の整備を目的とした、フリーランス新法が2024年11月1日に施行されるのはご存じでしょうか。フリーランス新法を有効に活用したいなら、事業者は当制度の概要を把握しておかなければなりません。

 

そこで本記事では、フリーランス新法が事業者にどのような影響を与えるのか詳しく解説します。あわせて、フリーランス新法のために事業者が準備しておくべきことも紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

 

フリーランス新法とは?概要を解説

 

フリーランス新法は、フリーランス労働者の権利を保護し、公正で安定した労働環境の提供を目的とした法律です。以下に法律が果たす役割をまとめました。

 

  • フリーランスが正当な報酬を受け取れるようにする
  • 報酬の未払い、遅延を防止する
  • フリーランスの労働環境を整備する
  • フリーランスに対するハラスメントを防止する
  • 不当な業務委託の中途解除や更新を防止する

 

まず、フリーランス新法の施行により特定業務委託事業者とフリーランス労働者のパワーバランスの偏りがなくなります。また、クライアントはフリーランスに対して、業務委託した際、書面等で業務内容や報酬、支払い期日などを明確に提示しなければなりません。

 

以上より、特定業務委託事業者は業務委託への真摯な対応が求められ、逆にフリーランスは法律の施行により権利と利益を守りやすくなります。

 

フリーランス新法はいつから開始?

フリーランス新法は、2024年11月1日に施行されました。

 

つまり、11月1日以降に締結された業務委託契約は、フリーランス新法の適用対象内となります。また、施行日前に締結された業務委託契約であっても、契約を更新した場合は、フリーランス新法の適用対象内です。

 

なお、施行日前に業務委託契約を締結し、契約を更新しなかった場合は、フリーランス新法の適用対象外となるため、法律の適用条件に注意してください。

 

フリーランス新法の罰則に注意

特定業務委託事業者は、フリーランス新法に違反すると罰則を受けます。罰則の概要は、次の通りです。

 

  • 公正取引委員会・中小企業庁長官・厚生労働大臣などによる助言・指導・勧告を受ける
  • 勧告に従わない場合には命令を受け、企業名が公表される
  • 命令に従わない場合、50万円以下の罰金が科される可能性がある

 

なお、特定業務委託事業者の従業員がフリーランス新法に違反した際にも、上記の罰則は適用されます。そして、違反した従業員だけでなく、所属企業も罰則対象となることを覚えておきましょう。

 

フリーランス新法が適用される対象

 

フリーランス新法の適用対象は「業務を受注するフリーランス労働者」「業務を委託する特定業務委託事業者」の2者に限られます。下表に詳しくフリーランス新法が適用される対象者の定義をまとめました。

 

対象者 定義
フリーランス 業務委託の相手方となる事業者で、従業員を使用しないもの
発注特定業務委託事業者 フリーランスに業務委託する事業者で、従業員を使用するもの

 

なお、当法律ではフリーランスのうち「従業員を使用している」「消費者を相手に取引をしている」という方は適用対象外です。フリーランス新法を活用したい方は、まず現在委託している業務が法律の対象になっているのかを把握しておきましょう。

 

フリーランス新法施行による事業者のメリット

 

フリーランス新法の施行により、事業者は権利や利益を守りつつ、多様な働き方を実現できます。以下に、事業者のメリットをまとめました。

 

  • 取引条件が適正化される
  • 就業環境が整備される
  • ハラスメントを防止できる

 

まず、特定業務委託事業者はフリーランスに対し、業務委託した際に書面やメール等で契約条件を明示しなければならなくなりました。契約条件の明確化により、不当に低い賃金での労働や報酬の未払いおよび遅延を防止できます。

 

また、育児や介護などと両立しやすくなったのもメリットのひとつです。加えて、フリーランスへのハラスメント対策に係る体制も整備されました。これにより事業者は、フリーランスへ配慮しつつ、受発注者間でのトラブルを防止できるようになります。

 

フリーランス新法施行による事業者のデメリット

 

フリーランス新法は、事業者に対してさまざまなメリットを提供しますが、デメリットが発生することも覚えておきましょう。当法律の施行により、生じるおそれのあるデメリットは次の通りです。

 

  • 手続きが複雑になる
  • 適正価格での報酬UPに対応しなければならない

 

まず、フリーランス新法施行により、特定業務委託事業者側の手続きが複雑になります。なぜなら、業務の内容や報酬額・支払い期日など細かな部分をすべて書面やデータとして明示しなければならないためです。

 

また、フリーランスにとって報酬額の適正化はメリットになりますが、業務を委託する側の特定業務委託事業者側にとってはデメリットになりかねません。交渉により発注費用を抑えるということができなくなるため、委託費用の増加につながる場合があります。

 

フリーランス新法のために事業者が準備しておくこと

 

フリーランス新法のために事業者が準備しておくべき2つの項目を紹介します。

 

遵守事項を理解しておく

事業者として重要なのは、フリーランス新法の遵守事項を理解しておくことです。遵守事項の把握により、スピーディーにトラブル対応ができます。下表に遵守事項の概要をまとめたので、目を通しておきましょう。

 

遵守事項(義務項目) 内容
1.書面等による取引条件の明示 ・業務の内容

・報酬の額

・支払期日等を明記する

2.報酬支払期日の設定・ 期日内の支払い ・発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内の報酬支払期日を設定する

・期日内に報酬を支払う

3.禁止行為 ・受領拒否

・報酬の減額

・返品等を禁じる

4.募集情報の的確表示 虚偽及び過去の募集情報を表示してはならない
5.育児介護等と業務両立に対する配慮 フリーランスの育児や介護の申し出に対して配慮しなければならない
6.ハラスメント対策に係る体制整備 ハラスメントに対して、適切な措置を講じなくてはならない
7.中途解除等の事前予告・理由開示 契約を中途解除・更新したりする場合は30日前に予告しなければならない

引用:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法に基づく申出について」

 

上表の項目に対する違反があった場合、事業者は、公正取引委員会または中小企業庁長官に対し適切な措置を求められると「公正取引委員会」の公式HPに明記されています。

 

既存の発注書・契約書を見直しておく

フリーランス新法が施行された今、再度、既存の発注書や契約書を見直しておきましょう。

 

なかには、当法律施行後に締結された業務委託契約があるかもしれません。もしフリーランス新法適用外の発注書・契約書があるフリーランスに連絡を取り、契約の見直しを申し出ましょう。なお、フリーランス新法施行前でも、契約を更新していれば適用内となります。

 

フリーランス新法についてよくある質問

 

フリーランス新法についてよくある質問を2つ紹介します。

 

フリーランス新法は建設業の一人親方にも関係あるの?

フリーランス新法は建設業の一人親方にも関係があります。ただ「従業員を使用している」場合には、フリーランス新法適用外となることを覚えておきましょう。

 

フリーランス新法の30日ルールとは?

フリーランス新法の30日ルールとは、特定業務委託事業者がフリーランスに対して支払う報酬について、支払期日を契約締結日または業務の完了日から30日以内に設定することを義務付けるものです。当規定は、フリーランスに対して公平な取引環境を提供するために制定されました。

 

まとめ

本記事では、フリーランス新法が事業者に与える影響について解説しました。

 

フリーランス新法が施行されたことで、フリーランスは業務量に応じた報酬を受け取れるほか、働きやすい労働環境を手に入れられます。2024年11月1日に施行されたフリーランス新法により、理想の働き方を実現できる事業者が増えていくことでしょう。