C言語の欠点を補うため開発された「Zig」が、新しいプログラミング言語として注目されていることをご存じでしょうか。
この記事では、Zigの特徴や魅力を詳しく解説します。Zigを導入するメリットなども紹介しているので、構造がシンプルで使いやすいプログラミング言語を探している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
プログラミング言語「Zig」とは?
「Zig」は2015年に登場した新しいオープンソースのプログラミング言語です。主に「堅牢性・最適性及び保守性」向けに設計されており、Cで困難とされていた、メモリ管理やエラーハンドリングを強化するために製作され、次のようなコンパイル時の手法・技術のサポートが可能となりました。
技術・手法 | 内容 |
ジェネリクス | 型の安全性を高め、プログラム動作時のエラーを防止する技術 |
リフレクション | プログラムが実行時に、自身で構造や情報を調べ、変更する技術 |
クロスコンパイル | プログラムを1つのプラットフォームでコンパイルして、別のプラットフォームで実行可能なバイナリを生成する手法 |
上記の手法・技術を活用することで、データ型に依存しない汎用的な関数やデータ構造の作成および柔軟なプログラム設計を実現できます。
なお、サポートの幅が広く有能な言語のため「複雑そう」という印象を持たれがちですが、高度な専門知識が必要となるプログラミング言語ではありません。C・C++と似てシンプルで直感的な構文であることから、初心者から熟練の開発者まで幅広い層に支持されています。
Zig・C・C++の違いとは?
プログラミング言語の「Zig」「C」「C++」は、設計された目的や用途に応じて次のような違いがあります。
Zig | C | C++ | |
登場年 | 2015年 | 1972年 | 1983年 |
目的 | 堅牢性、最適性、保守性の向上 | 汎用的な低レベルプログラミング言語 | C言語にOOPなどの高レベル機能を追加 |
メモリ管理 | 手動メモリ管理(エラーが起きにくいように設計) | 手動メモリ管理 | 手動および自動メモリ管理 |
構文 | ・シンプル
・直感的 |
・シンプル
・低レベル |
・複雑
・高レベル |
用途 | ・システムプログラミング
・高性能アプリケーション |
・OS
・組み込みシステム |
・ゲーム開発
・大規模ソフトウェア ・GUI |
欠点 | 若いプログラミング言語のため
特定の用途や環境に対する最適化が進んでいない可能性がある |
メモリ管理が複雑でエラーが発生しやすい | 学習曲線が急で複雑なため、初心者には扱いにくい |
Zigは登場して間もないプログラミング言語なため、汎用性の高いCと比べると、まだまだ普及率が低いのが現状です。ただ、シンプルなコード構造のため、コードの理解に対してストレスを感じることはありません。
従来、C・C++は広く利用されている一方で、メモリ管理やエラーハンドリングの面で課題がありました。対して、Zigは従来のプログラミング言語が抱える課題を改善し、より安全で効率的なプログラミング環境を提供しています。
Zigを導入するメリット
「Zigを導入するメリットがわからない」という方向けに、Zigを導入する3つのメリットを紹介します。
【メリット1】シンプルなコーディングが可能
Zigはシンプルなコーディングが可能なため、初心者でも慣れるまでに時間がかかりません。
実際に、どれほどZigの構文がシンプルなのか、プログラミング言語の基本的なプログラム「Hello,World!」で比較してみましょう。
プログラミング言語 | 構文 |
C | #include <stdio.h>
int main() { printf(“Hello, World!\n”); return 0; } |
C++ | #include <iostream>
int main() { std::cout << “Hello, World!” << std::endl; return 0; } |
Zig | const std = @import(“std”);
pub fn main() void { std.debug.print(“Hello, World!\n”, .{}); } |
C、C++が4〜5行を利用する一方で、Zigは3行程度に抑えられるのが特徴です。いかにZigの構文がシンプルかわかります。
【メリット2】実行ファイルが非常に軽量
Zigは、不要なライブラリやランタイムを含まない「ゼロ依存」の設計を採用されており、実行ファイルが非常に軽量であるため、次のメリットを得られます。
- 読み込み速度が速くなる
- メモリの使用量を低減できる
ゼロ依存とは、プログラムが外部のライブラリやモジュールに依存しない設計のことです。つまり、必要な機能や依存関係が最小限に抑えられており、実行ファイルがほかのソフトウェアに頼らずに独立して動作できます。
読み込み速度の向上により、プログラミングの起動時間が短縮できるため、メモリの使用量を抑えたい場合や、システムのパフォーマンスを向上させたい場合に役立つでしょう。
【メリット3】外部ツールへ依存せずに開発可能
Zigは、外部ツールに依存せずに開発できます。なぜなら、ビルドツールやユニットテスト機能が標準で提供されているためです。
まずビルドシステム「zig build」は、プロジェクトの構築と管理を簡素化し、複雑な依存関係や設定を必要としません。次にユニットテスト機能は、コードの品質と信頼性を向上させるためのテスト作成と実行が可能です。
以上の機能により、追加のツールやライブラリを導入せずに、開発からテストまで一貫したワークフローを実現できます。
Zigを導入する課題
Zigは歴史の浅いプログラミング言語のため、本項で紹介する2つの課題を抱えています。
【課題1】標準ライブラリが充実していない
Zigの標準ライブラリは、ほかのプログラミング言語と比較すると、まだまだ発展途上であり、次のような標準ライブラリが充実していません。
- 機械学習
- グラフィックス
現状として、上記の機能や用途では、専門性の高いC++には劣っている状況です。ただし、Zigのコミュニティは急速に拡大しており、今後は標準ライブラリやツールの充実が期待されます。
【課題2】公式のパッケージマネージャがない
Zigには公式のパッケージマネージャが存在しません。
パッケージマネージャがないと、開発者が必要なライブラリやモジュールを手動で管理する必要があり、以下の問題が発生しやすくなります。
- バージョン管理の複雑化
- インストール管理の複雑化
まず、必要なライブラリ同士の依存関係を手動で確認し、適切にインストールする手間が発生します。また、各ライブラリを個別にダウンロードしてインストールする手順が増え、プロジェクトのセットアップが複雑化し、管理が難しくなるでしょう。
ただ、非公式ではあるものの、Zigのパッケージマネージャを提供しているコミュニティも存在します。例えばサードパーティ製として「zig.mod」なども提供されているため、安全性や信頼性を確認したうえで導入してみましょう。
複数あるプログラミング限度のなかでもZigを選ぶべき理由
現在、世界には約9.000種類のプログラミング言語が存在すると言われています。そのなかでも、プログラミング言語のZigを選ぶべき理由を2つ紹介します。
【理由1】C・C++のライブラリを活用できる
Zigは、C・C++のライブラリを活用できるように設計されています。
まず、Zigはプログラミングコードを1から書く必要がありません。また、歴史が長いC・C++の膨大なドキュメントやチュートリアル、ライブラリをそのまま利用できます。
「開発スピードを向上させたい」「プログラミング初心者の負担を減らしたい」と考えている方にとって、Zigは最適なプログラミング言語と言えるでしょう。
【理由2】C・C++との互換性が高い
Zigは、C・C++との互換性が高く、既存のコードベースを最大限に活用できます。
なぜなら、当言語はC・C++の欠点を補うために設計されたプログラミング言語であるためです。例えば、従来のC・C++では、主に次のような課題がありました。
- エラーハンドリングが統一されていない
- 異なるプラットフォーム間の開発が難しい
対して、Zigは複雑化していたエラーハンドリングを簡素化し、コードの可読性と保守性が向上しています。加えて、C・C++との互換性が高いため、既存のIT資産を放棄する必要がありません。
C・C++で形成した資産を活かしつつ、より安全で効率的な開発環境を実現できるため、シンプルかつ柔軟性の高いZigを導入してみてはいかがでしょうか。
おわりに
本記事では、C・C++の後継として注目を浴びるZigの特徴や魅力を解説しました。
結論として、Zigなら蓄積されたC・C++資産を無駄にすることなく開発に活用できます。また、エラーハンドリングの簡素化やクロスコンパイルの強力なサポートにより、開発者にとってより使いやすい環境を構築できるでしょう。
現代の開発ニーズに応えるプログラミング言語として期待されているため、開発者の負担を減らせる「Zig」の導入を検討してみてください。