ITを活用したビジネス運用のなかで、現在多くの企業が取り組んでいるトレンドを知りたいと考えていないでしょうか。
そこでこの記事では、ITインフラとオペレーションの最新トレンドについて解説します。実際の取り組み事例も紹介しているので、自社で対応すべき取り組みを決める参考にしてみてください。
目次
ITインフラは今、どこに向かっているのか
ITインフラの未来は、以下に示す3つのキーワードにおいて大きな変革が起きると予想されます。
- 柔軟性
- 自動化
- 持続可能性
かつてはオンプレミス中心だったITインフラですが、今ではクラウド、コンテナ、エッジコンピューティングの活用が主流となっています。また2025年を見据えると、単なる技術選定だけではなく「どう運用するか」「どう効率を上げるか」「どう持続可能にするか」という視点がで動く企業が増えてきました。
例えば、総務省の情報通信白書(令和6年版)によれば、IT投資は「DX対応インフラの整備」「AI導入による運用効率化」にシフトしています。ITインフラとオペレーションが単なる土台としてではなく、経営の要へと変化してきている証拠です。
そのため今後は、技術そのものよりも、それを支える戦略と組織設計、実装力が問われる時代に入っていくと考えられるでしょう。
インフラストラクチャ・オペレーションの最新トレンド
ここからは、2025年に注目すべきITインフラとオペレーションの5つのトレンドについて解説します。
【トレンド1】プラットフォームエンジニアリングの進化
開発者の生産性と運用の安定性を両立するのが「プラットフォームエンジニアリング」です。
プラットフォームエンジニアリングとは、開発者がソフトウェアを効率的かつ安全に開発・運用できるように「共通の開発基盤(プラットフォーム)」を整備・提供する技術領域や組織活動のことを指します。
開発者が毎回インフラを自前で構築するのではなく、標準化された使いやすい開発者向けのサービス環境を社内に用意することで、開発・運用をもっと速く、安全にするのが特徴です。
従来のDevOps(開発と運用を連携して行うソフトウェア開発の手法)では、開発者自身がCI/CD環境やクラウド構成を扱う場面が多く、属人性や運用負担が課題でした。対してプラットフォームエンジニアリングは、共通の開発基盤(IDP)を整備し、自己サービス型で開発環境を提供することで、開発効率と品質の両立を実現します。
【トレンド2】AI運用(AIOps)の浸透
現在のITインフラとオペレーションでは、障害予兆検知やログ分析をAIに任せ、システム運用を自動化・効率化を図る「AIOps」のニーズが高まってきています。
IDC Japanが2024年に実施した調査によると、2028年には国内企業の約30%がAIOpsを導入し、障害対応の迅速化や属人性の排除に活用されると予想されています。
すでにAIは国内中で認知されている技術であることから、大量ログの自動分類・相関分析といったテクニカルな要素にも活用されていくでしょう。
【トレンド3】持続可能性(サステナビリティ)重視のインフラ選定
現在のITインフラとオペレーションは、環境負荷を抑えられる「グリーンITインフラ」が、企業の選定基準のひとつとなっています。
DX化などをきっかけに、世の中全体が持続可能性を追い求めるようになりました。そのようななか経済産業省が推進している「GXリーグ基本構想」によると、脱炭素経営を推進する企業の多くが「再生可能エネルギー利用」「省エネ型データセンター」への移行を進めている状況です。
ただ効率的かつコストパフォーマンスに優れたインフラを整備するのではなく、再エネ供給地域にあるクラウドリージョンを優先的に選ぶニーズが強まりつつあります。
【トレンド4】クラウド運用コスト最適化
近年、クラウド化によるコストの無駄を削減するために「FinOps(Financial Operations)」という新しい運用管理の考え方が登場しました。
FinOpsとは、クラウドのお金の使い方に透明性を持たせ、チーム全体で「コストに責任を持つ仕組み」のことです。クラウドは便利で柔軟ですが、放っておくと無駄な支出が次々と出てきます。そのため、次のような方法でコストの最適化が図られるようになってきているのです。
- 予算管理:使用量に応じて調整できる従量課金制の採用
- モニタリング:自動レポート+リアルタイム通知を採用
- 運用責任の所在:全社でコスト意識・ナレッジを共有
運用のノウハウが不足している企業の場合、使っていないサーバが立ちっぱなしであるほか、担当部門ごとにコストが不明確になりやすいため、根本的な問題の解決としてクラウド運用コスト最適化が取り組まれています。
【トレンド5】液体冷却インフラストラクチャ
クラウドサービスのニーズが高める現代では、データセンターの高密度化が進んでます。そこで活用されだしているのがITインフラにおける「空冷→液体冷却」への転換です。以下に液体冷却の利点をまとめました。
- 消費電力と運用コストを削減できる
- 電子機器の長寿命化と保守性向上を期待できる
- ZEH型データセンター構想との親和性が高い
株式会社野村総合研究所が公開している「令和3年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業」によると、液浸冷却ソリューションによって、冷却エネルギーを最大 95%削減できたという報告も見つかります。
以上より、無駄なコストを削減するため、運用の仕組み自体を改善していく流れができつつある状況です。
企業が取り組むインフラストラクチャ事例
インフラストラクチャにおける最新の取り組みは、すでに多くの企業が動き始めています。参考として、最新トレンドと関係性の高い事例を整理しました。
クラウド移行を加速させた製造業の統合インフラ構築
以下に示す企業では、FUJITSUのAWS活用支援ソリューションを利用して、製造業における統合インフラを構築しました。
- 朝日生命保険相互会社
→インフラ機能を統合的に管理するクラウド共通基盤をAWS上に構築 - ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社
→顧客接点を強化しOMOを実現するサービスをAWS上に構築 - 日本特殊陶業株式会社
→バックアップ環境をAWS上に構築
管理方法をクラウドへ移行したことにより、システム統一による開発期間の短縮や、データの一元管理による在庫管理の最適化、災害対策・BCP強化などを実現しています。
液体冷却と再生可能エネルギー活用で脱炭素化
以下に示す企業は、それぞれ自社データセンターのサーバー冷却システムを液体冷却方式に転換し、消費電力の削減を実現しています。
- KDDI、三菱重工業、NECネッツエスアイ
→データセンター内のサーバーを液体で冷却する液浸冷却装置を活用し、冷却電力の94%削減 - NTTデータ
→データセンターに液浸冷却方式の冷却システムを構築し、消費電力を97%削減 - 菱洋エレクトロとゲットワークス
→コンテナ型データセンター向けとして国内初の液体冷却設備を導入
電力消費をすることで、日本の火力発電所依存によって起こるCO2排出量増加を防止しています。
企業が取り組むオペレーション事例
業務オペレーションのなかで企業が特に注力しているのが、以下に示す2つの要素です。
- AIOps導入で障害対応を自動化
- プラットフォームエンジニアリングで開発・運用の連携
AIを活用した自動アラート体制の構築により障害の予兆検知率を高めるほか、自動検証を実施する体制を整えるなど、人手不足に悩む企業でも品質の高い業務対応が可能となっています。
まとめ
2025年に向けたITインフラとオペレーションの鍵は「戦略的な選定」「実行力のある実装」の2つだと言えます。
また、進化し続けるクラウドやAIの技術だけでなく、企業文化や組織体制、コストと環境のバランスまで含めたトータルな視点が求められています。特に、プラットフォームエンジニアリングやAIOpsといった実践的な取り組みは今後、企業競争力の源泉となっていくのではないでしょうか。