マイグレーションとは?活用シーンやメリット・デメリットを解説

2024.10.31
カテゴリー:開発

 

システムやデータを新しい環境に移行する「マイグレーション」を実施すれば、ソフトウェアの性能向上やセキュリティ強化などができるほか、業務効率の向上やコスト削減も期待できます。

 

本記事では、マイグレーションの取り組みであるリライトに焦点を当て、活用シーンやメリット・デメリットをわかりやすく解説しています。ぜひマイグレーションを実施する際の参考にしてください。

 

マイグレーションとは?

 

マイグレーションとは、システムやデータを既存の環境から別の環境へ移行するプロセスです。下表に主な活用シーンをまとめました。

 

項目 活用シーン
データの移行 古いシステムから新しいシステムにデータを移行したいとき
アプリケーションの移行 既存のソフトウェアを新しいプラットフォームに適応させたいとき
システムの移行 ハードウェアやネットワーク設定を含めて、新しいシステムに移行したいとき

 

データやアプリケーション、システム等を移行することで、既存の状態よりもパフォーマンス・セキュリティを強化できます。また、運用コストやメンテナンスコストを削減できるのがメリットです。

 

マイグレーションは単なる技術的な作業ではなく、企業が保有するIT資産の価値を向上させる重要な戦略だと言えます。

 

マイグレーションとリプレースの違い

本記事で紹介するマイグレーションとは別に、既存のシステムやソフトウェアを完全に新しいモノに置き換える「リプレース」というプロセスがあります。2つのプロセスは混合されがちなので、わかりやすく違いを下表にまとめました。

 

項目 マイグレーション リプレース
定義 システム・データを新しい環境に移行 既存のシステムを新しいモノに置換(システム・ソフトウェアなど)
目的 ・システムの性能向上

・セキュリティ強化

・コスト削減

・老朽化対策

・技術的限界の克服

資産の活用 既存の資産を活用しつつ移行 既存の資産を完全廃止

 

定義や目的に違いのある2つのプロセスですが、企業のニーズに応じて選択されます。マイグレーションは主に、クラウド移行やソフトウェアのアップデート時に用いられる手段です。

 

マイグレーションの種類

 

マイグレーションには、主に3つの種類があります。下表に概要をまとめました。

 

種類 概要
リホスト 基盤部分のみ新しいインフラに移行
リライト 古いプログラムを最新のプログラム言語やフレームワークで再構築
リビルド 既存のシステムをゼロから再構築

 

マイグレーションの選択は、企業のニーズやリソースに応じて異なります。リホストは迅速でコスト効率が高い一方、リライトやリビルドは刷新されたシステムの長期運用が目的です。

 

なお本記事ではリライトに焦点を当て、メリットや活用方法について詳しく解説します。マイグレーションのリライトに関心のある方は、ぜひ参考にしてください。

 

マイグレーションとして言語変換をするメリット

 

マイグレーションとして言語変換をする2つのメリットを紹介します。「マイグレーションのメリットが知りたい」という方は、参考にしてください。

 

①システムのブラックボックス化を防止できる

マイグレーションとして言語変換を実行すると、システムのブラックボックス化を防止できます。

 

ちなみにブラックボックス化は、業務の属人化によって起こる問題です。例えば業務がブラックボックス化すると、システムの内部構造の理解が困難になるほか、特定の人物しか業務できないケースに発展します。最悪の場合、業務が滞りかねません。

 

対してマイグレーションで言語変換を実行すれば、システムの内部構造が明確になりブラックボックス化を防げます。特定の人物に業務が集中しがちな企業は、ブラックボックス化を防止できるマイグレーションを活用しましょう。

 

②設定の複雑化を防止できる

マイグレーションを活用すると、システム設定の複雑化を防止できます。

 

長い期間使用したレガシーシステム(古いシステム)は、IT技術が揃っていない時代のニーズに合わせて調整されているため、構造が複雑化することも少なくありません。また、技術者が退職してしまっている場合、システム設定の把握が困難です。

 

そういった状況で役立つのがマイグレーションになります。マイグレーションのリライトを実施することにより、既存のシステムが刷新され、構造をシンプル化できるのが魅力です。参考として、システム設定の複雑化を防止するメリットを以下にまとめました。

 

  • 誰でもスムーズに操作できる
  • システムのメンテナンスが容易になる
  • 技術者の負担を軽減できる

 

マイグレーションによって特定の人物に依存しなくなることから、業務の属人化を防止できるほか、運用費や人件費を削減できます。技術者に依存しがちな現在のシステムに使いにくさを感じているなら、マイグレーションを活用してみてください。

 

マイグレーションとして言語変換をするデメリット

 

マイグレーションとして言語変換をするデメリットを2つ紹介します。マイグレーションのデメリットを考慮に入れてから、実際に活用を検討しましょう。

 

①マイグレーションに膨大な期間が必要になる

言語変換を伴うマイグレーションには、スクリプトの翻訳やテスト、デバッグが含まれ、膨大な時間がかかります。

 

また、プロジェクトの規模や内容でスケジュールが変化するため、マイグレーションに必要な期間を断定できないこともデメリットです。一例として、マイグレーションの流れを、以下にまとめました。

 

  1. 現状分析と計画立案
  2. 移行先の検討
  3. テスト・リハーサル
  4. 本番移行

 

上記のステップを考慮すると、マイグレーションは年単位でかかる見込みです。また、プロジェクトの進行状況やイレギュラーによって期間はさらに延びるおそれがあります。スケジュールの遅延や予期せぬコストの増加を防ぐには、詳細なプロジェクト計画の作成が重要になるでしょう。

 

②費用が高額になりやすい

マイグレーションには費用が高額になりやすいデメリットがあります。費用が高額化しやすい理由は、次の通りです。

 

  • 専門知識を持つエンジニアを雇わなければならない
  • 言語変換のプロセスに膨大な時間がかかる

 

システムの言語変換には、専門的な知識とスキルを持つエンジニアが必要となり、人件費が発生します。また、コードの翻訳やテスト、デバッグには膨大な時間がかかり、作業中の運用コストも無視できません。さらにマイグレーションは、予期せぬ問題やバグの修正に伴う追加のコストが発生します。

 

したがって、言語変換を伴うマイグレーションの総費用は高額になりがちです。不測の事態に対応するために、入念な費用の見積りとコスト管理に力を入れましょう。

 

マイグレーションをせずにシステムを運用する注意点

 

レガシーシステムをマイグレーションせずに運用する場合、システムの遅延や運用コストが増大するリスクがあります。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が困難になり、競争力の低下を招く要因になりかねません。

 

実際、経済産業省が公開している「DXレポート」によると、約7割の企業がレガシーシステムを足かせと感じており「2025年の崖問題」が各業界で懸念されています。

 

なお「2025年の崖問題」とは、技術者不足やシステムの老朽化によって、企業のDX推進が大きく妨げられる問題です。経済産業省では、このままレガシーシステムの運用が続き、DXを推進しないと2025年から年間で約12兆円の経済損失が発生すると予想しています。

 

「2025年の崖問題」に危機感を覚えているなら、早急にレガシーシステムを刷新しましょう。

 

おわりに

本記事では、マイグレーションのリライトについて、活用シーンやメリット・デメリットを解説しました。

 

結論として、マイグレーションを活用することで、技術的負債の軽減や保守・運用コストの削減が期待できます。また、経済産業省が推奨しているDXの推進に素早く対応できるのがメリットです。

 

現在のシステム環境に満足できていないなら、この機会にレガシーシステムを見直してみてはいかがでしょうか。