【ベトナムのオフショア開発動向】特徴、単価、会社タイプ、得意分野を紹介(2022年度版)

2022.02.13
カテゴリー:オフショア開発

【ベトナムのオフショア開発動向】特徴、単価、会社タイプ、得意分野を紹介(2022年度版)

 

オフショア開発白書の報告によると、2020年度にオフショア開発を検討した企業は、前年比で6倍以上に増加。世の中の急速なデジタル化に対応する方法として、オフショア開発への注目が高まっていることが分かります。

 

その中でもベトナムは、オフショア開発を検討した企業の半数以上(52%)が委託先の候補として挙げる人気の国です。他国を圧倒する注目度の高さから「オフショア開発はベトナム一強時代」と語る専門家もいるほどです。

 

今回の記事では、ベトナムのオフショア開発動向と今後の展望をご紹介します。

 

ベトナムの特徴

 

企業がオフショア開発を利用する主な目的は「コストカット」と「人材確保」です。オフショア開発の委託先としてベトナムが人気な理由は、このニーズを他国よりも魅力的に満たすためです。ここではベトナムの主な特徴をご紹介します。

 

アサインコストが安価

 

ベトナム人プログラマー1名のアサインコストは、1ヵ月あたり20〜30万円が相場です。同じ条件で日本人プログラマーをアサインする場合、100万円以上かかることもあります。日本人に比べて人件費が約30%抑えられます。

 

IT人材が豊富

 

ソフトウェアの品質を担保するため、IT人材は「安かろう悪かろう」では意味がありません。ベトナムは国策でIT人材の育成に力を入れており、安くて高レベルのエンジニアが揃っています。

 

TopDevの年次レポートでは、Javascript、JAVA、PHP、Pythonなど、いわゆるWebシステム開発の言語に精通しているエンジニアが多いことが紹介されています。

 

ベトナム人のエンジニアを対象にプログラミングを学ぶ動機を調査したアンケートでは、「技術に興味があるから」との理由がトップ。人材が豊富なだけではなく、最新の技術動向への関心が高い特徴も兼ね備えていることが分かります。

 

親日でコミュニケーションが容易

 

日本語は、ベトナムの第一外国語です。片言でも日本語を話せるベトナム人が多く、オフショア開発の委託先に、日本語検定を取得しているベトナム人がいることも珍しくありません。まじめで勤勉な国民性も日本人と相性が良く、コミュニケーションを取りやすい国です。

 

時差は2時間ほど。ほぼ国内と同じ時間帯でプロジェクトを進行できます。地理的な条件から、オンライン会議やチャットなどのコミュニケーションが取りやすいことも大きな特徴です。

 

ベトナムの単価相場

 

オフショア開発白書によると、ベトナムの単価相場は次の通りです。

職種 プログラマ シニアエンジニア ブリッジSE PM
金額 30~40 40~50 40~50 60
前年比 +24.6% +16.8% +10.4% -1.6%

※オフショア開発白書2021年度版を元に作成※金額単位・・(万円/人月)

 

TopDevの年次レポートによると、2020年時点でのIT人材のニーズは2015年比で56%増加。ベトナムの単価相場は上昇傾向で、この傾向は今後も続くと見込まれています。しかし、現時点では日本人に比べて安く、コストメリットが大きい状況です。

 

特筆すべき点は、PMの単価です。オフショア開発白書の調査によると、アジア6カ国(ベトナム、フィリピン、インド、バングラデシュ、ミャンマー、中国)中で最も安価との検証結果が出ています。また、前年比と比べると単価が下落しています。

 

日本語に堪能なプロジェクトマネージャーが育ち、コミュニケーションコストが下がったことで、単価が抑えられているとみられています。

 

ベトナムのオフショア開発会社タイプ

 

オフショア開発会社は、所在地と経営者の違いによって次の5つのタイプに分類できます。

 

タイプ 経営者 所在地
ベトナム人 ベトナム
ベトナム人 日本
日本人 日本
日本人 ベトナム
外資系

(ベトナム、日本以外)

ベトナム

図:ベトナムオフショア開発会社タイプ

 

順番に詳しく解説します。

 

タイプ①:ベトナム人経営/ベトナム国内

 

ベトナム国内でベトナム人が経営する会社です。母国語を中心にコミュニケーションをとっているため、場合によっては、コミュニケーションに英語が必要になります。コミュニケーションロスを防ぐため、日本人PMやブリッジSEのアサインが必要になるでしょう。

 

タイプ②:ベトナム人経営/日本国内

 

日本国内でベトナム人が経営する会社です。日本企業とのビジネスにフォーカスしていますので、会社内にブリッジSEや日本人PMが在籍している可能性が高く、ベトナム語も堪能なので現地エンジニアとの意思疎通も問題なし。安定したコミュニケーションが期待できます。

 

タイプ③:日本人経営/日本国内

 

日本国内で日本人が経営する会社です。日本人が関わっていますので、日本語でのコミュニケーションがスタンダードになります。現地エンジニアとの仲介に関しては、日本人PMやブリッジSEをオプションでアサイン可能なケースが多いため、コミュニケーションロスによる失敗リスクが最も低いパターンとなります。

 

タイプ④:日本人経営/ベトナム国内

 

ベトナム国内で日本人が経営する会社です。日本企業がベトナムに進出したケースで、いわゆる日系企業です。現地エンジニアと密なコミュニケーションが取れることが大きな利点で、エンジニアの状況を逐一把握しながらプロジェクトを遂行できます。

 

タイプ⑤:外資系企業/ベトナム国内

 

ベトナム、日本以外の国がベトナムで経営する会社です。ベトナムへのオフショア開発は、米国、欧州など様々な国が注目しています。日本向けに特化したサービスや実績があるか、コミュニケーションに問題がないか事前の確認が必須です。状況によっては、日本人のブリッジSEやPMのアサインを検討する必要があるでしょう。

 

ベトナムの得意分野

 

TopDevがベトナム人エンジニアにおこなったアンケート調査によると、ベトナム国内で人気のあるエンジニア職は、バックエンドエンジニアをトップに、フルスタックエンジニア、フロントエンジニアと続きます。

VIETNAM IT MARKET REPORT 2020を元に作成

 

フルスタックエンジニアとは、システム開発の一連の工程を担えるエンジニアのことで、上流工程から下流工程まで一連のプロセスを遂行できます。

 

フルスタックエンジニア、バックエンドエンジニア、フロントエンドエンジニア・・・これらの職種は「Webエンジニア」と呼ばれ、Webシステムの開発に携わります。Webエンジニアには幅広い活動フィールドがあり、チャットボット、クラウド勤怠管理、オンラインスケジュール管理など、様々な開発事例があります。

 

オフショア開発白書によると、日本企業がオフショア開発を利用して行ったシステムの内訳は、Webシステムとスマホアプリを合わせると全体の60%以上を占めています。日本企業が求める人材ニーズとベトナム人エンジニアの供給体制が見事にマッチしています。

 

プロジェクトの規模は、メンバー数名の小規模案件から100名を超える大規模案件まで多数の実績があります。オフショア開発を初めて利用する場合は、小規模案件にベトナム人を数名アサインするなど、少人数から活用するとプロジェクト失敗のリスクを減らせるでしょう。

 

ベトナムオフショア開発の展望

 

オフショア開発が流行する兆しを見せた数年前は、オフショア開発を利用する主な目的はコストカットでした。

 

しかし、昨今は、急速に進むデジタル化社会への対応や日本の人口減少に伴うエンジニア不足を解消するためにオフショア開発を利用する企業が増加しています。

 

さらに、日本ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が国策に盛り込まれていて、実現するために各企業はエンジニアの確保に頭を悩ませています。

 

今回ご紹介したようにベトナムはエンジニアを豊富に抱えているため、日本企業のニーズにマッチしています。今後は、国内外の垣根を取り払いエンジニアを抱えておくことが、スタンダードな開発体制になるかもしれません。

 

オフショア開発を利用する際に多くの企業が懸念する「コミュニケーションロス」については、ベトナムが親日であることに加えて、Zoom、Skypeなどオンラインコミュニケーションの浸透や翻訳技術の向上の恩恵で抑えられます。

 

ベトナムのオフショア開発において、人材、コミュケーション、品質のレベルは向上しつづけるでしょう。ベトナム人のコストが高騰するまでの間は、ベトナムへのオフショア開発を利用することで多くのメリットが享受できます。今後もベトナムオフショア開発のマーケットは拡大を続ける見込みです。

 

参考資料

・Eng_VietnamITNation2020_ByTopDev.pdf

https://topdev.vn/Eng_VietnamITNation2020_ByTopDev.pdf